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普段は……主達を前にしているときは、へらへらと何ともお気楽に笑っている忍であったが、 ただ、二人きりになった時に、ふとそんな顔をする事があるのを、小十郎は知っている。 いや。そうではない。あの忍の奥底には、いつどんな時であろうと消える事の無い闇がある。 誰も気付かないほどに小さな嘆き。ゆるゆると蝕んでいく絶望のような。 小十郎を前にした時だけ、忍は、普段必死に押し隠しているそれらを、隠そうとしなかった。 強請られるままに抱いてやれば、その時だけ、忍びの内に溜まった闇は形を潜めた。 それがどれだけ己に歓喜をもたらしたのか、あの忍は、きっと知らないだろうと、小十郎は少しだけ苦笑する。 ……あいつは無事なのか。 己の身の今後よりも、ただ今は、それが心配だった。 松永久秀は好色、そして同時に、残酷だ。何より己の欲を満たす為ならば手段を選ばない。 そんな者の手に落ちて、佐助が全くの無事とは考えられなかったが、しかし、少しでもその無事を願わずにはいられない。 せめて、あの心だけでも無事であるようにと。 佐助。 ……佐助。 心中で、滅多に呼ばない名を呼んでやっても、佐助からの返事は、あるはずがない。 そういえば、佐助、と呼んでやったことなど、片手で数えられる程しかなかったような気がする。 もっと名を呼んでやれば良かったと、悔いてももう遅かった。 せめて、と。 「……佐助」 小さく小さく、その名を呟いてみたが、返事など、 「かた、くら……さん……ッ」 「!?」 今に消えてしまいそうなほどに小さな小さな声だった、が、小十郎の耳に届くには、十分であった。 伏せていた目を開き、弾かれたように顔を上げる。 格子の向こう、暗がりの中、確かにそこに。 朱色を、見た。 喉が引き攣った。堪らず、佐助、と叫びかけた小十郎は、だがしかし、 事の異常性に気が付いて、言葉を失った。 佐助の肌は、戦場に立つには不似合いなほどに白かった。 無論、忍の体、修行時代に負ったという古傷だらけではあったが、しかしその、奥羽の雪の如き肌の白さに先に目が行くほどだった。 白いな、と思わず呟けば、忍は影の生き物だからね、と返された。 日に当たることが滅多に無いから、と自嘲めいた笑みを浮かべるその唇を塞いだあとで、 痕がよく映えていい、と囁けば、助兵衛だねぇ、と笑われた。 影、故のその白さを、ゆっくりと慈しんでやるのが、好きだった。 ――――その、白が、目の前にあった。佐助は、一糸纏わぬ姿で、そこにいた。 違う、そればかりではない、それだけであったならまだ良かった。 佐助は両手を後ろ手に縛られて、縋るように木の格子に噛り付いていた。 その頬が、全身が、薄っすら紅を帯びているのが蝋燭の仄かな明かりの下でさえ分かった。 色素の薄い目からはぼろぼろと、情事の時にしか見た事の無い涙を溢れさせて。その姿は、まさに、 まさに、小十郎の危惧が現実になったのだと、示すものだった。 木の格子に隠れてその下肢は見えなかったが、小十郎には大体の想像がついた。 だから見たくもなかった。見えなかったのはむしろ幸運だったのだろう。 松永久秀の恐るべき計画5
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213 :名無しさん@ピンキー:2008/11/08(土) 19 51 24 ID eNjXmnKx 佐かすは 佐助が分かってて茶化したり、からかったりしてそうだから 強引に奪ってくれるのを待ってそうな気がする 幸かすは 赤くなったり青くなったり 訳が分からなくなるのを放っとけなくて かすがから行くみたいな感じだ 215 :名無しさん@ピンキー:2008/11/08(土) 22 07 59 ID e/pNDjdR 213見てたら急に妄想の神が降りてきたよ 佐助×かすが 佐助「すっげえ、かすがの神水が溢れ出てきてるよ」 じゅるじゅる かすが「あっ、ああ…やめろ……の、飲むな!」 佐助「うほっ!いいねぇ バサラゲージ溜まって俺様の空蝉も雲隠できなくなっちゃったよ。ほらほら」 かすが「見せるな! う、うつくしくない……!」 佐助「んでさぁ、俺様の空蝉をかすがの“うつくしきつるぎ”じゃなくて “うつくしきさや”に納めてみたいと思ってるんだけど」 かすが「馬鹿を言……っ、あああッ!ゆ、指を、入れ…る、な……!」 ぐちゅぐちゅ 佐助「えー?かすがはこんなにしてまで我慢できるってこと? つまり俺様の空蝉は欲しくないってことだな、ごめんな、悪いことして」 ずるり かすが「あっ……だめ……」 佐助「ん?なに?何か言った?」 かすが「ぅう…馬鹿!サスケベ!」 幸村×かすが 幸村「うぉおおお!!かすが殿の破廉恥な裸を見ていたら、それがしの槍が火焔車!!」 かすが「落ち着け!」 幸村「ど、どうしたら!? どうすれば良いのでござろうかお館様ぁぁぁぁああ!!!」 かすが「だから落ち着け!」 幸村「おおおお!!それがし、まだまだ精進せねば!!申し訳ございませぬ、かすが殿!!」 かすが「分かったから泣くな!私が何とかしてやるから!」 ごそごそ むにむに 幸村「なっ…!かすが殿の月輪にそれがしの火焔車した槍をはさんで、 一体どうなさるおつもりか!!」 かすが「その暑苦しい口を閉じろ」 むにむにぺろぺろむにむに 幸村「ぅおおおぉぉお!! 何でござろうか、この感覚はァァァア! 気持ち良いでござる!かすが殿の密儀、気持ち良いでござる!!! ううおおおお!!それがしの槍が、大噴火でござる!!!!」
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「んあっ!はあ!あぁ!」 肌と肌がぶつかり合う音が激しくなる。 「ああっ!さ、すけ。私、もうっ……もうっ!んんっ。」 「俺も……かすがっ。」 絶頂を向かえ佐助にしがみつく。 その直ぐ後に胎内に精が流れ込んできた。 獣故か、注ぎ込まれる感覚が酷く幸福だと感じる。 荒く息を着きながら佐助にもたれかかる。 肩に頭をのせたままふと上を見ると佐助が笑っていた。 佐助は私の背中に手を回すと私の唇をついばんだ。 抵抗する気になれず、黙って受け入れているともう片方の手が私の胸に撫でるように触れた。 絶頂を向かえたばかりの敏感になった肌はそれだけて全身に甘い痺れを走らせる。 「っあ……。」 感じたせいでつい中に入ったままの佐助を締め付けてしまうと、むくむくとまた芯を持ち始めた。 それに治まった筈のうずきが身体中に広がっていく。 「ごめん。俺……。」 「ああ……もっとくれ……。」 私は脚を絡め、佐助に擦り寄った。 「しんぱいするひつようは なかったようですね。」 「そのようじゃな。」 狼と猫の騒ぎ声に駆け付けた信玄と謙信は顔を見合わせた。 「ふふ……なかむつまじきことです。」 「うむ、して謙信。儂等も一つ手合わせをせぬか?」 「じつによきこと……おうけしましょう。」 二人はまぐわり合う二匹を背に一つの部屋へ帰って行った。 そんな騒ぎの起こっている屋根の下、一匹の柴犬が部屋の中央に座っていた。 柴犬は膝に置いた己の手を握ったり開いたりしながらじっと眺めている。 その真上では天井が軋み、うーうーにゃんにゃんと発情した獣達の声が響きわたる。 「某も誰かに相手をして貰いたいでござる。」 そう呟くと柴犬は深い深いため息をついたのであった。 終
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その夜は、秋の気配を色濃く感じる夜だった。 虫の音が庭から聞こえ、見事な満月の月光が城を照らす。 幸村の自室の障子越しに佐助は声をかけた。 それに応え障子が開けられると、 主はそろそろ就寝しようとしていたらしく部屋に布団が敷いてある。 好都合だ。佐助は内心ほくそ笑んだ。 「どうした、佐助。今日は天井裏からではないのだな」 「ま、ね。添い寝してあげるのに天井裏からじゃ汚いでしょ」 「そ、添い寝?!おっ俺はまだ怖い夢は見ていないぞっ」 「ガキか、アンタ」 がくっと首を落として嘆息するが、気を取り直して佐助は言った。 「そういう添い寝じゃないよ、旦那。夜伽だよ」 「久々に寝物語でもしてくれるのか」 おとぎ話でもするのだと思っているようだが、佐助は意味をねじ曲げると妖艶に笑う。 「ま・・・旦那に余裕があればだけど、それは後でね」 廊下から一歩進み、敷居をまたぐと後ろ手に障子を閉める。 月光が障子で和らぎ、仄かに室内を照らした。 激6
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さゆき3 「佐助、狡いぞッ」 やけにご立腹だなあとのんびり構えていたら幸村にいきなり絡まれた。絡まれた、というか…一方的に詰られている、というか。 こりゃお館様関係かな、また目の前しか見えてないよとすごまれているのに佐助は心配になった。 「なぁにが」 「某の知らぬところでお館様の鍛錬のお相手をつとめたと聞いた!」 「あー…、そういえば」 なんかぼーっと木にぶらさがってたら突然あのでっかい斧を振るわれて、『弛んでおるぞ佐助ェエ!!』といきなり鍛錬とはとうていいえない殺し合いにもつれ込んだのは、つい先日。 「旦那、あれは鍛錬じゃないよ…お館様の暇つぶし」 「ぬぅ!それでもこの幸村、お相手仕りたかった!」 旦那にとっちゃお館様相手なら何でも喜んでやりそうだな。紙一重で庭石砕いた一撃を思い出す佐助はかすかにため息をついた。 「俺様繊細だからお館様みたいな豪快な相手の修練には向いてないよ、明日あたり頼んでみたら?」 「むう…」 少し頬をふくらませた幸村に、ははあと佐助は感づいた。自分から頼むのではなく、お館様から声をかけられたのが羨ましかったに違いない。あの気の良い猛虎なら若子の頼みを喜んで引き受けそうだが、それはそれ。 「じゃあ旦那、今から俺と稽古しよう」 「佐助と?そういえば、手あわせするのは久しぶりであるな」 「そーそー。旦那と俺様が組んでたらお館様も絶対乱入してくるからさ。声かけられるのを待つのも悪かないけど、乱入せずにはいられなくすればいいでしょ」 「…何かお館様を欺いているような気がするぞ」 「たーまにはいいでしょ。…お館様と手あわせ、したくない?」 「それはしたい!」 「そんじゃ、かかってらっしゃいよ。俺様も気張っていくぜ」 印を結んで分身共々構えをとると、闘いの気配に幸村の顔つきがかわる。 「応!」 射殺されそうな視線が佐助をとらえ、槍の一撃が繰り出されるその刹那、幸村のこういう顔をいつも見ているだろう甲斐の虎がちょっとばかり狡いと思った。 もちろん熱血の弟子と忍の闘いを聞いて虎が乱入しないわけがなく、幸村が半分喜びの声をあげながら虎に猛撃を繰り出したのはこのすぐ後のことだった。
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「本気なんだな」 「ああ」 「……そうか」 それだけ言うと、佐助はかすがに背を向けた。 「俺はお前を斬れと言われて無い。お前を連れ戻せと言われただけだ」 佐助は半分かすがの方を振り返る。その眼に最早先程の冷たさは無かった。 「好きにしろ。今俺がしてやれるのはここまでだ。後は自分で始末を付けろ」 「い、言われる迄も無い」 かすがは戸惑った。他人に優しくされた時どうしたら良いのか分からないのだ。 彼女の不器用さを見て佐助は寂しげに笑った。 「辛くなったらいつでも俺の所に来いよ。胸ぐらい幾らでも貸して…」 「うるさい!さっさと行け!」 かすがは真っ赤になって言葉を遮った。 「……じゃあな」 次の瞬間佐助はかすが達の前から忽然と姿を消した。 ヒラリと黒い羽がかすがの掌に舞い落ちる。かすがの胸に何かがつかえたが、 それが何であるか彼女は図りかねた。 はっきりしているのは、これから本格的に千代女や佐助と刃を交えるという事だ。 その覚悟は既に出来ている。 今度佐助に会うのは戦場だろうか、任務先だろうか。 (私は、後悔などしていない) その眼に剣としての決意に満ち溢れていた。 夜明け前18
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2009年11月 箱根 旅行記一覧#2009 ←2009年10月毛呂山トレイルライド | 2009年11月東濃・北三河→ 俺企画のワンデーツーリング。 箱根の旧道を登り、熱海に降りて温泉入っておいしいもの食べて帰る。 参加者:俺、ちえみ、安藤、大平、丸田 装備 旅行記 2009-11-07 11月7日(土) ↓ 輪行( 新宿→小田原) 神奈川県小田原市 小田原駅 ↓ 神奈川県道73号 小田原城跡 ↓ 神奈川県道73号 国道1号 神奈川県道732号 神奈川県足柄下郡箱根町 そば処桔梗屋 ↓ 神奈川県道732号 甘酒茶屋 ↓ 神奈川県道732号 国道1号 箱根関所跡 ↓ 国道1号 道の駅箱根峠 ↓ 国道1号 箱根峠 ↓ 静岡県道20号 熱海市道 静岡県熱海市 ホテルアイオラ ↓ 熱海市道 海蔵 ↓ 熱海駅 ↓ 輪行(熱海→小田原→新宿→ ) 旅行記一覧#2009 ←2009年10月毛呂山トレイルライド | 2009年11月東濃・北三河→ この項目のタグ 2009年11月 旅程 日帰りツーリング 神奈川県 静岡県 関連する項目 「11月」+「ツーリング」 「11月 ツーリング」をタグに含むページは1つもありません。 「神奈川県」+「ツーリング」 2008-08-17 / 2008年8月ヤビツ峠 / 2009-01-04 / 2009年1月横須賀 / 2010-01-11 / 2011-01-09 / 2012-04-08
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「ねぇ旦那……」 戦場で姫と呼ぶなと命じられて以来、佐助は幸村を名前で呼んでいない。 結ばれても、幸せでも、超えてはいけないものくらいわきまえている。 「俺さ、あんたが突っ込んでも、笑ってられる程……のん気じゃないんだよね」 胸に手をやって揉んだ。痛い、と幸村が泣く。 「痛いってことは、生きてるってことだよ。生きててよかったね。そう思わない?」 汗と精と愛液でどろどろになった陰部を擦るように膝を入れる。 幸村が身をよじる。踵で佐助の脚を押しのけようとする。 「佐助……、もう、謝ったではないか……っ!」 だから、もう許せと。縄を外せと、幸村は命じる。 かちんときた。 もう許してあげない。 どんなに心配しても、どんなに命を助けても、幸村は懲りない。 狂おしい程の忠義も敬愛も、伊達政宗を目の前にした幸村にとって、 塵あくたも同じこと。 「……そう。そっか」 佐助は笑った。含まれる狂気に、幸村は怯える。 右手で幸村を抑えたまま、左手で脱ぎ捨てた着物を探る。着物の内側に仕込んだくないを 取り出す。 「さ、佐助。俺は、傷つけられて喜ぶような、癖は、ないぞ」 「そういうの、俺も好きじゃないしぃ。首絞めたりとか、焼いた火箸押し付けたりするのも、 あんまり好きじゃないんだけどさ」 佐助は無造作に幸村の脚の間にくないを置いた。突き立てても面白そうだけれど、 褥の後始末が面倒だ。 「ひっ」 幸村は脚を動かすのをやめた。佐助は幸村の脚を持ち、満足そうに笑う。 「こういう使い方は、結構好きかな」 にっこり笑うと、しなやかに肉の張った脚を撫でた。抵抗しようにも脚を動かせず、 ゆらゆらと佐助を誘うような動きしかできない。 大きく動かしたり閉じようとすれば、くないで怪我をすることになる。 佐助のくないには毒が塗られていると何度も聞かされている幸村は、これでもう 脚を閉じることができない。 脚を曲げさせ、広げさせる。何度も佐助をくわえて赤く熟れたような色をした 幸村の陰部を撫でた。 「………んぅ……っ!」 「すごい、真っ赤だよ、旦那」 わざと耳元で囁くと、日に焼けた肌が内側から赤く染まる。 ふいと顔を背ける仕草が気に食わない。 嫌がるように体をひねる体を抑え付け、男根をねじ込む。 「んぅうう!」 ものすごい声だ。女の喘ぎ声じゃない。 いや、喘いでいないのか。痛みに呻いているのか。 「痛いの?」 優しく頭を撫でると、幸村の顔がわずかに溶ける。 素直な性分だ。羨ましいけど妬ましい。 自分が動きやすいように腰を抱え、ゆっくりと動く。 「ん……ぁぁ………」 幸村は顔を左右に振り、脚を佐助の腰に絡めてきた。 何度も絶頂を極め、敏感すぎるぐらい敏感になった体。今では、幸村から佐助を求めてくることもある。 手を握っただけで破廉恥と顔を赤くして逃げ出すような状態から、よくがんばったと思う。 自分で自分を褒めてあげたい。 遊女みたいに色々してもらったりしたいけれど、そこまで仕込もうと思ったら、あと何年かかるだろう。 「ああ、いいなぁそれ」 昼は高潔な武将。夜は妖艶な遊女。 理想的じゃないか。 槍を手に先陣を切る姿も、閨で乱れる姿も、どちらも楽しめるのだ。 「ねぇ、旦那はどう思う?」 「な、にが……」 だらしなく開いた唇。赤い、綺麗な色をしている。 唇の隙間から覗く歯と舌がちらちら動く。 この口にくわえさせたら、きっと気持ちいいだろう。 閨の中のことすら自制が利いてしまう体だが、きっと我慢できなくなる。 そんな思いを一度味わったから、次を求めてしまう。 そんな風に思わないよう叩き込まれたが、好きな相手と幸せに結ばれた今なら、 いいんじゃないかと思えてくる。 こうやって、嫉妬に狂って、相手を攻めているときだけ。 佐助は人に戻れた。 madness jealousy3
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屋根の上で仰向けに寝転んだ佐助は星を眺めていた。 空にはあの夕暮れの時と同じ宵の明星が輝いている。 あいつは元気にしているかな、などという佐助の感傷をよそに、 さっきから熱血師弟が互いを呼び合いながら殴り合っていた。 いい加減止める頃合だ。佐助は溜め息を吐くと胡座をかいた。 遠く越後で彼女も溜め息を吐いているだろう。 そろそろ彼女の主が晩酌を始める時間だ。 謙信は大胆にも毎晩独りで縁側に腰掛け、梅干しだけを肴に手酌で呑む。 危険だからせめて供を付けるか屋内で嗜んで欲しいとかすがは嘆いているらしい。 今一つ考えの読めない謙信だが、佐助は感謝している事があった。 高潔な彼は決してかすがを閨に送らないのだ。 あのまま閨に送られる日々が続いていたら彼女は遠からず自害していただろう。 皮肉な結果だが武田を出たからこそ彼女は今日まで生きている。 いつか夜明けが訪れたら、約束通り彼女を自分の故郷へ連れて行きたい。 一緒に暮らすのもきっと悪くないと思う。 それまで悪態をつかれようが邪険にされようが、危なっかしい彼女を見守って行こう。 それが暗闇から彼女を救えなかった自分への罰だ。 さてと、と佐助は立ち上がる。 (お互い、頑張ろうな) 佐助は微笑み掛けた。 彼女も見ている、この星空へ。
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「佐助!お館様を見なかったか!」 軽く息を切らしながら走り立ち止まった幸村の目の前に、がさりと音を立てて木 の葉が舞い散る。 枝葉の間から逆さにぶら下がるようにして佐助が顔を出した。 「あれ、旦那は軍議に参加してないんだ」 「そうか…まだ軍議の最中であったか。某今回は別動隊故、ゆっくりと休むよう にと言われておるのだが…」 「……の割には随分息を切らしてるけど」 軽く呆れたように佐助は幸村の全身、上から下まで眺めた。 ざっくりと荒く切り揃えられた髪は汗ばんだ頬に張り付き、遠目に見ても土埃を 被って汚れているように見えた。 それにここまで走ってきただけにしては随分と大きく胸を上下させている。 まだ呼吸が整わないのか、その度に豊かな乳房がふるふると揺れるのが見えた。 (随分と成長したなー…) 恐らくつい先程まで鍛練でもしていたのだろう。 図星を突かれて幸村はうっと言葉を詰まらせた。 「し、仕方がないであろう…戦前で気がたかぶっておるのだ!お館様のお役に立 つ絶好の機会を目の前にしてじっとなどしておれぬ!!」 (でもそういうとこは変わんないわけね) これでは何を言っても無駄だろうな、と佐助は軽く溜め息をついた。 もちろんお館様が休んでおくようにと言ったのには理由がある。 今回の戦の相手は上杉軍。 幾度も刃を交えてはその度に決着がつかない手強い相手だ。 戦がどれほど長引くかもわからないし、相手が相手だ。 念には念を入れて、用心するに越したことはない。 だというのに幸村はお館様に言われたにも関わらずじっとしていられないらしか った。 「気持ちはわかるけどいくら旦那でも今回ばかりは用心しないと途中でばてちゃ うかもよ?」 忠告も兼ねて佐助はそう言ったが幸村の耳には届いてないようだった。 「佐助!暇があるなら少し鍛練に付き合え」 (ほらやっぱり) 結局その後程々に付き合いつつ、途中で幸村をなだめ鍛練を止めさせることしか できない佐助だった。 伊幸2